DAY 379 Reminiscence.

メトロから降りて改札階に上がると足が自然と動いた。確かこの出口だ。回転ドアを抜けて階段の先には見覚えのある煙草屋。ここでたまにシャグやフィルターを買っていたのだ。

あとは通り沿いにまっすぐ歩けばいいだけ。途中の交差点にあるブルームーンやプリングルスをよく買いに来たグローサリーでは店員が表に玉ねぎを並べていた。信号を渡ってしばらく歩くと小綺麗な高層マンション、その向こうに小さく見えるのはかつて住んでいたアパートだ。

目の前まで来て三階のバルコニーを見上げる。いったい何本、何十本、何百本の煙草をあそこで吸ったのだろうか。灰皿代わりにしていたスターバックスのラテの瓶はすぐに一杯になった覚えがある。咥えていた煙草が短くなったので週に一回通っていたランドリーの前の通りを下ってクイーンズ・ブールバードに出た。

高架下の中古車屋にずらりと車は相変わらず小さな星条旗で飾り付けられていた。そのまま東へ歩いて行くといつもなんとなく柄が悪そうだなと思っていたクラブの前に銀色の風船を持った黒人の女性が立っていた。

おそらく昨夜のイベントか何かで使われたのであろうその風船を彼女は空に向かって手放した。浮かび上がった風船は風に乗り一瞬で小さくなり何処かに飛んで行く。その光景を見送ってから振り返った彼女は他に観客がいたことに気づいて恥ずかしそうに笑った。

 

電気グルーヴ – 虹


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