地図とにらめっこしながら一服していると前から歩いてきた若い男が「火貸してくれん?」と言ってきた。ポケットからライターを出して渡してやると彼は煙草に火を点けて「Have a nice day!」と言って颯爽と去っていく。なんやそれ、かっこええやないか。少しの嫉妬と今度は自分も使っていやろうと浅ましく決意する。
目当てのハイライン、廃線になった高架の遊歩道はチェルシーのギャラリー街のすぐ近くだった。高架に上がる前にギャラリーをいくつか覗いてみたがなんだか気分が乗らなかったので早々に切り上げて階段を上る。
平日の昼下がりということもあって人も少なく高架の上の雰囲気はなかなかよかった。ただし日陰に入るとさすがに寒いので立ち止まらずにゆっくりと南に向かって歩き続ける。しばらくするとデッキチェアが置いてあるところがちょうど日向だったので少し休むことにした。
モントリオールのライブに備えてイヤホンからはBeach Houseがエンドレスに流れて続けている。少し気怠そうなボーカルのヴィクトリアの声、凛として冷たい空気、眩しすぎず暖かな西日。絶妙のバランスだった。欲を言えば煙草が吸いたかったが5分もすれば煙草のことなんて忘れていた。
夜になり帰る前にMarshallsに立ち寄る。ドレスシャツを二枚と何故かもう必要ないのに今更海水パンツを持ってレジに並んだ。順番を待っている間ふと黒いキャップが目に入る。RE2PECTという刺繍が入っていた。
一昨年の帰国直前、メトロに乗っているとやけに背番号2が入ったヤンキースのユニフォームを着ている乗客が多かった。後で調べてみるとその日はちょうど引退するデレク・ジーターのヤンキースタジアム最終戦だった。
そのジーターを讃えるために制作された「RE2PECT」という動画が素晴らしかったので今でも印象に残っていたのだ。そういえばうちの親父が今月末で定年だったことを思い出しそのキャップを拾い上げる。うん、いい土産だ。
FaltyDL – Gospel of Opal (ft. Anneka)
ポートフォリオに Bogota を追加しました。
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