もう雨音で目覚めても落胆しなくなってきた。人間諦めが肝心、どう足掻いたってお天道様には勝てないのだ。
FOTOISTANBULのサイトを見ているとまだポートフォリオレビューの枠に空きがあることに気づく。しばらく考え、「トルコ語喋れなくても参加できる?」と問い合わせたら「大体の人は英語喋れるから大丈夫」という回答。ほとんど何の準備も出来ていないのに火曜日の午前の枠に申し込む。おいおい、正気か自分?
雨が止む気配は無い。ラップトップで今まで撮ってきた写真とにらめっこしていると日が暮れて、ぼちぼち出かける時間になったので誰かが部屋に忘れていったビニール傘を拝借させてもらった。
一時間前はちょっと早すぎたらしく、ジョゼフ・クーデルカの講演会場である芸大の門はまだ閉まっていた。近くの屋根がある場所でホームレスのおっさんたちに混じって雨宿りして30分後、再び出直して芸大に向かい中に入ると人、人、人。クーデルカを侮っていたわけではいけどこんなに人気があったとは知らなかった。そして雨なのにカメラ携帯率が異様に高い。
15分前になって講堂の扉が開くとあっという間に席が埋まる。直前にやって来た人達は通路に座り込んだり後ろで立ち見したりとまさに満員御礼、こりゃすげえわ。
講演時間の大半はスライドショーで、過去のチェコの内戦やジプシーたちを撮影した作品から最近の考古学的な遺跡の風景を撮影した作品まで盛り沢山。初めて見る遺跡の写真は派手さやインパクトは全然無かった。だが淡々と切り替わっていくたくさんのスライドを見続けているとボディ・ブローを食らい続けたような気分になりどんどんと引き込まれていく。クーデルカの対して勝手に持っていたイメージががらっと変わってしまった。
全てのスライドショーが終わり質疑応答の時間。壇上に立ったクーデルカは最初に「私は自分の写真についてあれこれ語りたくない。写真が全て語ってくれてるからね」と前置きした。続けて「第一私はワークショップとかやったことないんだよ。終わったら速攻で帰るからね」と言うと講堂は笑いに包まれた。
その後作品のコンセプトや動機についての質問が飛んだが彼は多くを語らず、「まず実際に自分が足を運んで、そこで初めて考えて、そして写真を撮るよ」とだけ言ったのが忘れられない。終わりの時間になると拍手喝采を浴びながら彼は宣言通り逃げるようにして舞台袖に消えた。
e.s.t. – Goldwrap
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