DAY 138 He’s singing with a slouch.

ホステルの冷蔵庫の中には昨日食べたペンネとトマトソースが残っていた。でもそれだけだとかなりせつない、というかわびしい。せめてソーセージか何か加えようとスーパーに向かう。

歪んだギターの音が聞こえた。轟音というより、少し物悲しい響き。メインストリートから小さな路地に入るとオープンカフェがあり、そこの小さなステージで男が一人ギターを弾きながら歌っていた。

髪も髭もしばらく切ったり剃ったりしていないのだろう風貌だった。裸足の指先で足元の機材を操り直前に弾いたり歌ったりしたフレーズをループさせながら、時々横に置いてあるキーボードを叩いたりしながら男は歌う。

まるでジョン・フルシアンテみたいだなと思ったがすぐにその感想を取り消す。誰かと比較したりするのはとても失礼だと思ってしまうくらい男の歌に引き込まれていた。歌詞は英語だったが自分の英語力ではほとんどわからなかったがそんなのは全然問題じゃなかった。

男の出番は終わったが使用していた機材は撤収されなかった。ステージではお洒落っぽいモダン・ジャズを違う人間が弾き始める。また後で男の出番がありそうだったのでソーセージを買ってからホステルに戻り、美味くも不味くもない夕食を済ませた。

日は完全に落ちてカフェの周りの野次馬は増えていた。バーカウンターで注文したトニックを待っていると男がステージに上がる。さっきと同じように前かがみになりながら男は歌い始めた。

どうしようもなく歌い、どうしようもなくギターをかき鳴らす人がどうしようもなく好きだ。心から楽しめたとは言い切れないザコパネだったがこのステージを見れただけで来た甲斐があったと言い切れる気がする。

 

John Frusciante – Carvel


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