DAY 123 For a few minutes, in a dream.

よく晴れた日曜日だった。路地を曲がったところでどこかからバイオリンの音が聴こえてきて足が止まる。どの建物から、どの窓から聴こえてくるのが首を伸ばしてぐるりと探してみたが音の出処はわからなかった。ちょうど近くにベンチがあったので座って煙草に火を点ける。

どうやらバイオリンは練習中らしく時々途切れたり音が外れたり掠れたりしたが全然気にならない。少し離れたところにカフェがあり、外に置いてある椅子に座った年配の女性の足元には大きな犬が座っていた。犬は通りすがりの撫でてくれる人には愛想が良かったが散歩中の別の犬には重く低い唸り声を上げた。やけに穏やかで夢心地な、昼下がりの数分間。

 

深夜、さっきまで賑わっていた宿のリビングでは気がつけば自分と長期で滞在しているパリ在住の男性二人だけになっていた。過去にギャラリー経営に携わっていたという男性と現代のアートにおける写真事情について少し話し込む。やはり写真が作品として(ある程度の値段以上で)売買が成立するためにはアナログ的手法や要素がないと厳しいということだた。

なるほど、自分が好きで買う側の人間だと想像してみると確かにデジタルカメラで撮影されてプリンタで出力された作品よりもフィルムで撮影されて印画紙に焼き付けられた作品のほうを有難がってしまうかもしれない。明確で合理的な理由は無くただなんとなくだが、身銭を切って写真なり絵画なりの作品を購入する時に合理的な理由なんて必要ないだろうし。

ビールを飲みに行くという男性を見送ってリビングは自分一人だけになる。ラップトップのキーボードを叩くカタカタという音だけが響いていた。

 

Sufjan Stevens – Decatur, or, Round of Applause for Your Stepmother!


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