DAY 117 Overwhelming

方向感覚も現在位置もとっくにわからなくなっていた。ガイドブックに書かれている通り城壁の中はまるで迷路みたいでザンジバルのストーン・タウンを思い出す。スマートフォンで地図を確認することも出来たが結局一度も使うことはなかった。

 

カメラを持ってうろついていると一番撮るチャンスが多いのは子どもたちで、アフリカに入ってからは特にそうだ。こちらが何もアクションを起こさなくても寄ってくるし向こうから撮れ撮れと言ってくれる。

撮れと言われたら撮らない理由がないので大体シャッターを切るのだが、自分から子どもに声を掛けることはそんなに多くない。別に子どもが嫌いなわけではなくて、単純に撮りやすくてわりと絵になりやすいというのがあまり好きになれないしなんとなくズルしてる気分になってしまうのだ。

 

細い路地が交差する場所でどっちに進もうか迷っていると後ろから声を掛けられた。扉から女の子が顔を出してカメラを指さしたのでしゃがんでファインダーを覗く。ちょっと距離があってわりと引いた構図だったのだが一枚撮った後で無意識のうちに人差し指を立てていた。

女の子に近づいて再びファインダーを覗く。「ああ、こりゃアップで撮りたくなるわ」「こんなん反則ですやん」「そんな綺麗な瞳で汚いおれを見ないでー」

カメラの液晶画面で撮った写真を見せると女の子は恥ずかしそうに笑い、小走りで扉の向こうに消えていった。うーん、今まで娘だったら嫁に出したくないランキング一位はバファローベルだったけどライバル出現です。もし自分がこの女の子のお父さんだったら将来の来たるべき時に備えて今から松本人志ばりにムキムキになる。そして連れてきた男に理不尽な闘魂注入を何発かする、たぶん泣きながら。

 

向井秀徳 – Dandy in Love

 


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