DAY 112 Addis Abeba Again

隣の家から出てきた猫はまだまだ眠り足りなそうに目を細めていて、何度か前足で顔を擦るように洗ってからこちらの家にやって来た。鳴いて朝飯を催促しているがあげられそうな食べ物は生憎自分の手元にはない。

猫は昨日の夕食の残りの匂いを嗅ぎつけたらしくキッチンに入ろうとするが抱き上げて阻止する。わっしゃっしゃと撫でてやるが猫の頭の中は食い気で一杯なので目を離すと何度もキッチンに入ろうとして、その度に抱き上げて移動させた。しばらくしてこいつからは何も貰えないなと悟った猫は出て行った。

開け放たれた玄関のドアから隣の家の小さな女の子が外に出てきたのが見えた。人見知りらしくこの数日ずっと遠巻きに自分を見ているだけで、ちょっと近づく素振りを見せただけで離れていってしまう。手を振っても変顔をしても効果がないので試しにわりと思いっきりのコマネチをしてみたが女の子は真顔のまま直立不動を崩さなかった。

空港まで夫妻が車で送ってくれ、駐車場で彼らと別れた。ゴンダールに来る旅行者の多くは教会巡りをしたり近くの山にトレッキングに行って珍しい動物を見たりするらしいが自分はただ町をぶらついているだけで十分に楽しかった。穏やかな日々は過ごせたのは間違いなく夫妻や彼らの家族、友人たちのおかげだろう。多謝。

 

飛行機はアディスアベバに向かって離陸した。ああ、あの混沌としたところにまた戻るのかと思うと少し憂鬱になる。一時間のフライトを経て着陸すると小雨がぱらつくどんよりした天気が出迎えてくれて溜息が出た。

空港の外に出てミニバス乗り場まで歩き始める。タクシーの客引きが何人も寄ってきたがバッカ(間に合ってる)と連呼するとさっと離れていった。二週間ほど前にルワンダから来た時と違って今は少しだけ土地勘もあるしアムハラ語も僅かながら喋ることが出来る。ピアッサ行きのミニバスに乗り込む頃にはさっきまで感じていた憂鬱な気分は消えていて、むしろリラックスしていることに気づいて少し驚いた。

 

Eliot Lipp – The Area


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