DAY 028 Ordinary Afternoon

部屋の中に厄介な同居人がいないのは素晴らしい。昨夜はぐっすりと眠ることができ、目覚めても腕や足に赤い斑点なんてひとつも見当たらなかった。このホテル残念ながら朝食が提供されないため果物を調達しに外へ。バナナを一房買おうとしたら手持ちの少額のルピー札が少し足りず、おばちゃんが足りない10ルピーぶんもいで残りを渡してくれた。

溜まっていた洗濯物をごしごしと洗い、三日目のヨガへ。前半の太陽礼拝はだいぶ覚えてきたのでわりかしスムーズにこなせるのだが、後半の様々なポーズはなかなか厳しい。女の子座りから始まるやつなんて両足で出来る日が来るのかどうか想像できない。昨日ビールを飲んだせいか汗だくになりながら一時間が経過した。

部屋に戻ってソファでうとうとしていたらもう昼飯時とは言いがたい時間になり、慌てて外に安い食堂を探しに出る。通りを歩いていると黒い牛が何処か一点を見つめたまま立ち尽くしていて、ファインダーごしに目を合わせたが自分の姿は彼にとって障害物としてすら映っていないようだった。

適当に入った食堂は空いていて、まだ食べたことがなかったターリーを頼んだ。するとお前のためのスペシャルだと言ってライスのほかにチャパティまで付けてくれてくれたので味より量との戦いに。ついでにまだインドに入って数えるほどしかカレーを食べていないが早い段階で飽きることを確信した。これからはチョウメンを主食にしていこう。

満腹すぎてしんどかったので目についた売店でチャイを頼んで軒先で一服。すると後ろから声を掛けられ振り向くとプリー駅から一緒にオートリクシャに乗った若者ロビンがいた。歩いて駅まで次のチケットを買いに行ってその後ビーチ沿いにある安くて居心地がよさげなゲストハウスを見てきたらしい。

昨日までいたゲストハウスはお互いちょっと合わなかったねとFIZZというアップルサイダーを飲みながらまったり。彼も自分もある程度一人の時間がないときついタイプなのだ。下らない話を交えつつ談笑していたら太陽が陰って雲が黒くなってきたので軒先から離れて歩き出し彼と別れた。

宿に戻って部屋の外の布張りのデッキチェアに座り、繋がらないネット回線に苦戦しているラップトップを膝に乗せていると隣の部屋のイスラエル人のカップルが外に出てきた。彼らも外にあるソファに座ってタブレット片手に話し込んでいる。やがて女性のほうがこちらに来て話しかけてきた。

長めの坊主なのに後ろ髪の一部だけ伸ばして編みこんでいるダニエラはこの後インドを北上する予定らしく、ダージリンがいいんじゃないかとお互いに持っている情報を交換。ダニエラは自分が知っている日本の知識も披露してくれて、ちょっと前に観たアニメが素晴らしかったよ!と興奮気味に話してくれた。その映画のタイトルを聞くとなんと高畑勲のかぐや姫、ヴィエンチャンで会ったスペイン人の映画マニアも絶賛していたのでこの旅行で二人目だ。とても自分はまだ観ていないなんて言える空気じゃなかったので黙ってたけど帰国したらすぐにDVDを借りてこなきゃ。

ダニエラ達が外出したのでまた一人になった。近くの小学校から子どもたちの合唱が聞こえる。漁場が近いせいでたまに磯臭い臭いが流れてくるがすぐに気にならなくなる。ふと遠くに目をやると猿の大家族が建物の屋根を飛び越えて移動しているのが見えた。立ち上がってしばらく彼らの身軽さを眺めていると向かいのアパートのベランダにいる女の子も同じように彼らを見つめていた。下を見ると学校帰りの子どもたちと目が合って女の子が手を振ってくれた。手を振り返して部屋に戻りソファに横になる。腹が全然減ってないから晩飯は食べなくてもいいな。後で外の売店にラッシーとアイスだけ買いに行こう。

 

Daedelus – At Attentions


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