DAY 019 The Night for Adults Only

ラオスに行く前にバンコクを案内してくれたオーツから「仕事終わってからラーメン食いに行って一杯飲まね?」という誘いがありサイアム・パラゴンのマクドナルドで待ち合わせ。「着いたけどどこ?」「マクドの前におるよ」「こっちもマクドの前におるわ」と二人ともマクドナルドの前にいるはずなのに一向に合流できない。もしやと思いインフォメーションに「ここってマクド2つあったりするん?」と聞いたらイエスの返答。自分が待っていたのはマクドナルドカフェのほうで、オーツもパラゴンの中に2軒あることは知らなかった。

落ち合った後はそのままパラゴンの1Fに入っているばんからラーメンへ。醤油豚骨にライスを付けたがもうそのまんま日本のラーメン屋で出てくる味。この味を再び食べるのはいつになることやら…としみじみ味わった。若者たちで溢れる渋谷を凝縮したようなパラゴンから出てBTSに乗りビクトリア・モニュメントへ。電車を降りた直後にオーツが「俺らの近くの扉の前に立ってた若い女の子見た?あやつ扉が開いても全然動かないでずっとブロックしとったわ。最近の若い子はマナー悪いわー」とぼやいた。

 

バンコクに限らず日本だってマナーが悪い若者はいるので「しゃーない、ワルぶりたいお年頃なんよ。ばっどぼーいばっどがーる」と言っておいたがふとバンビエンで会った日本人の大学生の男の子を思い出した。彼と話した時間は5分もなかったと思うが会話はわりと印象に残っている。

「タイなんなんすか?ぜんぜん英語通じないし。あいつらアホっすよほんと。教育水準低すぎっていうか。ラオスはいいとこですねー!英語も通じるし」

うーん、タイもラオスも一部を除いて普段旅行者と接している人しか英語が話せないのは当たり前だと思うのだけれど。彼はたまたまタイで英語が通じない人とばかり話しただけなのでは。それに日本だって英語が通じにくいという点では海外からの旅行者泣かせの国だしね。

彼の口調がわりとオラッてたのもあって「まるで市原隼人から市原隼人的良さを抜いたような人だなあ」と感心していた。あ、ここで言う市原隼人はリリィ・シュシュからしばらく経ってルーキーズとかに出てた頃の市原隼人なので決して誤解されぬよう。リリィ・シュシュの市原隼人さんの演技は大好きです。

彼は鼻息荒く喋り続けていたが特に苦言を呈したり説教じみたことは言わなかった。へえそうなんだと流して、時々相槌を打って適当なところで話を切り上げた。

若者たちは覚えておいたほうがいい、大人は決して親切ではないことを。親切にされたとしたらよっぽどウマがあったかただの気まぐれか、あるいは若くて綺麗な女の子が相手の場合のみだ。村上龍(だったと思う)が言っていた「若い女の子はそれだけで価値があるが、若い男には何の価値もない」というのは本当だ。僭越ながら大人の端くれとしてそう実感している。

彼が将来昔を振り返って身悶えしないことを願っているが、きっと「昔はイキってたわー」ぐらいのいい思い出になるんだろうなあ。それもまた良しです。

 

ビクトリアモニュメントの近くのちょっとわかりにくい場所にあるSaxophoneは生ビールを頼むと名前にもなっているサックスの形をしたグラスで出してくれた。2Fに上がり1Fのステージが一望できる場所に陣取ってオーツとカールスバーグで乾杯。店内にいる客のほとんどが海外からの旅行者やバンコク在住の欧米系の外国人で年齢層も比較的高く、オーツ曰く「地元の若い奴らはもっと騒がしくてポップ&ロックな場所にいく」そうだ。

聴き覚えのあるメロディ。サビに入ったところでジョン・レノンのイマジンをジャズアレンジして歌っていると気づいた。甘すぎず軽すぎずしっとりと歌っているのは年配のドラマーで、今はエッグシェイカーを振りながらボーカルをしているがドラムの腕前はタイで一番と言われるくらいすごいらしい。

少し間を置いてからバンド編成になり、さっきのドラマーは確かに唸ってしまうほどの腕前だった。キーボードとベースは相変わらず目立たないがよい仕事をしているし、ギターも自分のソロ以外は変に突出しない弾き方をしていて好感が持てた。サックスもドラムと組み合わさるとより素晴らしい演奏を披露してくれたが、ここで特筆すべきは途中から入ってきたボーカルの女の子だろう。彼女はタイ人でまだ学生なのだが、ベテランで腕も確かな後ろのプレイヤーたちに怯む素振りすら見せず堂々と歌っていた。キャリアが浅くて若い子には出しづらい声の色艶もちゃんとあってただ脱帽。10年後20年後にはさらに素晴らしいボーカリストになっているだろうが、その頃には大きなステージで歌ってそうだからこのバーで見ることは出来ないかも。

バンドの演奏が終わって店から出た。ビクトリアモニュメントの回りををぐるっと反対側まで歩道橋で歩いてバス乗り場へ。ここでオーツとはお別れだ。彼と出会わなければバンコクの印象は全く別のものになっていただろうし、絶対にこんなに楽しめなかったはず。ああ、ますますインドに行くのが憂鬱だ。タイもラオスも楽しい記憶しかないのに、インドに行ったら一筋縄ではいかないことばかりだろうなあ。でもカレーだけは楽しみ。

 

Miles Davis – Seven Steps to Heaven


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