DAY 012 Nothing is Everything.

朝が来た。外にでるとじんわりと明るくなってきた空に気球が小さく浮かんでいた。煙を吐きながらしばしぼんやりと空を見上げる。

部屋に戻りパッキングを済ませ、いつものサンドイッチ屋で食べ納め。宿に戻ると暇そうな猫が寄ってきたのでこちらも構い納め。居心地が良すぎるこの宿に何度延泊してぎりぎりまでのんびりしようと思ったかわからない。何も無いけど全てがあった。それでもここらへんが潮時だ。これ以上はただひたすら堕落し沈没するだけだろう。のんびりするのは好きだけれど、沈没してしまったら自力で浮上することは難しいという自分の意志薄弱さは十分理解しているし。

久々に重たいバックパックを背負い、昨日チケットを買った旅行代理店に向かう。送迎バスに乗り込みバスターミナルのベンチでヴィエンチャン行きのバスが来るのを待つ。向かいのベンチにどんでもなくかっちょぶーなファッションをしたおっさんがいたので暇だったし話しかけてみた。身につけているペンダント、ブレスレット、ベルトなど全てが独特な雰囲気を醸し出していたからだ。

「そのペンダントすげえかっこいいね!」「親父がくれたんだ。もう30年くらい前になる」「日本の能面に似てるけどこっちのほうがクールですな」「おれはインドネシア生まれなんだけど、もう何年もアクセサリー作りながらいろんな国を回ってるんだ。おれが作ったやつあるけど見るか?」

と、彼が取り出してきたのは七福神の布袋さんみたいな顔が掘られた黒曜石のペンダントトップ。むむ、彼が自分でつけている能面には負けるがこちらもなかなかに魅力的。他にガネーシャのトップも見せてくれたがやはり布袋さんが気になる。提示された値段は10USドルで、店で買ったらまあ最低で30USドルは下らんだろねと彼はここで売る気はなさそうにバッグにしまった。彼は個人相手ではなく店に卸す形で収入を得ているらしい。

しばらく雑談していてもさっきの布袋さんがどうしても気になって仕方がない。あまり悩んでいるとバスが来てしまうので、彼に頼んでもう一度見せてもらい布袋さんを10USドルで購入した。ここでバスが来て、首にかけるロープはヴィエンチャンで見かけて声かけてくれたら渡すわと言われたので必ず探しだしてやると決意。

ヴィエンチャン行きのバスは途中で交通事故渋滞にはまり、10時に出発したのに着いたのは15時だった。もうある程度の地理はわかっていたので15分ほど歩き1週間前と同じBackpackers Gardenにチェックイン。受付にいたポーランド人にI’m back!と言ったら笑顔で迎えてくれた。

夜になり何度か噂を聞いた日本のラーメンに近いヌードル屋を探しに出た。大通りの車が途切れるまで横断待ちをしていると隣には同じく横断待ちをしている宿で見かけた青年が。ドイツ人のフィリップは大学を休学中で、オーストラリアでバイトして金を稼ぎ東南アジアからトルコに向かうらしい。

夏ぐらいにイランのイスファハーンに行きたいんよねと言ったら俺も7月にイラン行くぜ!との返答。じゃあ一緒に飯でも食うかと彼が昨晩発見した川沿いの安いヌードル屋台へ。確かに安かったしスープも美味しかったのだが、麺は明らかに茹で過ぎで根性がないゴムみたいな食感だった。

ヌードルを食べ終わりビール片手に一服していたら二人組の男が相席オッケー?と声を掛けてきた。見た目がアジア系の彼らはどちらもカンボジア人のルーツを持つベルギー人で、ちょうどフィリップとカンボジアについて話していたのでそのまま二人組の親や祖父母がクメール・ルージュから逃げてベルギーに渡った話を聞いた。いつものことだが近現代史をもっと学んでおくべきだったと少し後悔。今のままでも聞き手にはなれるんだけど、的確な相槌を打てる知識と英語力はやはり必要だ。

二人組はベルギーでバーテンダーをしており、日本のウィスキー(山崎、響、ニッカ)をべた褒めしてくれた。あと日本人旅行者についての彼らの感想は「英語もスペイン語も喋れないのにいろんな国を旅行してる日本人がいるんだぜ。奴らはクレイジーだ!」と呆れ半分、賞賛半分。「彼らはチャレンジャーなんだよ。あと彼らにはボディ・ランゲージがあるし」と返したら爆笑していた。しかし出発してから8:2の割合で野郎とばかり仲良くなってるなあ。何か根本的に改革しなければいけないのだろうが、その何かが全くわからない。

 

Mark Almond – The City


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