DAY 300 Everything always goes calmly.

起きてキッチンに顔を出すと管理人の女性が太巻きを作っていた。今日は宿の玄関を開けて店を出す日らしい。出来上がった太巻きをさらに天ぷらにすると聞いて昼飯用に一本注文する。

グアテマラに来たのはスペイン語を勉強するためなので宿の一室で行われていた授業をちょっと見学する。が、当たり前だが何行ってるか全然わからない。それにこの宿の居心地はいいのだがこの数日歩いた感じシェラの街はそこまで好きになれない気がするし。あ、メガパカ行くのだけはすごく楽しい。サン・ペドロ・ラ・ラグーナに行って勉強することになりそうだ。

太巻きの天ぷらを食べて満腹になり一服していると宿の白い犬が寄ってきた。足元をうろちょろして一通り匂いを嗅いで去っていく。その姿をぼんやり眺めていたらいつの間にか長くなっていた灰が火種を残してふわっと地面に落ちた。短くなった煙草を押し消してもう一本巻いていく。

日本を出て10ヶ月、それは「もう」なのか「まだ」なのかわからない。パスポートに押されたスタンプの数はそれなりに増えた。でもどこにいても同じようなことをしている。ドラマティックなこともドラスティックなことも滅多に起きないしたぶん起きてほしくはないのだ。たいしたことがなくても歩いたら疲れるし腹は減るから飯を食うしカメラがあるから写真を撮る。

昔、初めて担いだモノクロフィルムでぱんぱんに膨らんだバックパックの中に一冊だけ入れていた村上春樹の「遠い太鼓」という紀行文のあとがきに書かれていた一文を思い出す。「旅行というのはだいたいにおいて疲れるものです。でも疲れることによって初めて身につく知識もあるのです。くたびれることによって初めて得ることのできる喜びもあるのです」

 

Squarepusher – Lambic 9 Poetry


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