部屋の前で煙草を吸っていると通路の端に立っていたスタッフが「雨が来るぞ」と声を掛けてきた。確かにさっきから遠くの方で雷が小さく鳴っているが目の前の湖はとても穏やかで、雲は多いものの晴れ間も見えていたので雨が降りだすとはとても思えなかった。
湖の西、遠くのほうにもやっとした霧が見えた。その真下にある水面は細かく蠢いている。さっき灰を落とした煙草の先にはまだ赤い火種が見えているのに、気がつけば霧はすぐそこまで来ていた。
そして突然日差しが消えて代わりに屋根を叩くような轟音が響く。自分が今いる場所が霧に、正しくは雨に包まれたことを理解した。東の空はまだ明るいがそちらも時間の問題だろう。晴れと雨の境目を初めて見たなと呑気に考えていたがさっき干したばかりの洗濯物のことを思い出し、慌てて部屋の中に取り込んだ。これ明日のチェックアウトまでに乾かんだろうなあ。
Kettel – Pinch of Peer
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