僕らのアンセム

アンセム。辞書的には聖歌、賛美歌という意味もあるけれど一番しっくりくるのは祝歌であり、その曲が流れた瞬間、イントロの数秒で体温が上がり思わず叫んでしまうような曲がアンセムなのだと自分は思う。

小沢健二のとスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」は90年代のクラブというカテゴリーに囚われないアンセムだったはずだけれど、まだ子供だった自分たち世代からすればいい曲だ好きな曲だという印象はあっても幼かったゆえに自分たちのものという感じはない。そして21世紀に入って多様化する時代の流れに否応なく巻き込まれた音楽はもはや共通言語ではなく、ある意味ではとても幸福なことなのだけれど格段に入手しやすくなった様々な音楽を個人がそれぞれに楽しむものになった。

別に昔はよかったと嘆くつもりなんてないし自分は明らかにこんな時代に立ち会えて嬉しく思っているほうなのだが、あのCDが200万枚も売れてTVでは毎日のように音楽番組が放送されて毎日誰かと音楽の話をしていた日々を体験しているせいで少し寂しくなる時もある。48人的水槽や美少年事務所的水槽、アニメな水槽などそれぞれの水槽に分かれて住み分けが進んだ今、軽々とガラスの壁を飛び越えてしまうような曲が現れたらなんて面白く痛快だろうなと妄想してみちゃったり。

去年の秋に仕事で高知まで行かなければならず車で延々と高速道路を走っていて、iPodをつなぐ手段が無かったのでずっとラジオをかけていた。流れてくる曲に反応することもなく、眠気を妨げてもらうための車内の無害なBGMだったがある曲が流れてきた時にいきなり意識がスピーカーに持っていかれた。20年前に散々聴いたあの女性歌手の歌声とその声を囲む異質なビート、そりゃ女性歌手のネームバリューを考えたら流れてきても不思議じゃないが曲の名義ではあくまでfeaturingですよと。

運転しながらどんどん嬉しくなってきて、同乗者の方々にこのボーカル森高千里ですよなんて求められてない説明したりなんかしちゃったり。なんというか、いろいろとまだ捨てたもんじゃねえみたいなそんな気分を味わうことが出来た。最近になってTSUTAYAからその曲が入ったCDを借りてきて聴いていたら神聖かまってちゃんのボーカルの子が歌っている曲もとてもよくてついついリピートしてしまったりして。

「おしえて検索」というその曲の今をことさら美化したり肯定したりすることもなく、逆に卑下したり嘆いたりもせずただ淡々とリアルタイムな歌詞に久しぶりに背中をバンッと強く叩かれたような気持ちになった。「水星」の時も思ったけれど10歳近く歳が離れているのにこんなに心臓を鷲掴みにするtofubeatsという男、末恐ろしく頼もしすぎ。つくづく高知の仕事がかぶったせいでDE DE MOUSE x tofubeatsに行けなかったのが悔やまれる。


tofubeats – おしえて検索 feat.の子(from神聖かまってちゃん)


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