DAY 008 Black Butterfly

昨日自分のゴーストがちゃんと鶏たちのゴーストに囁いて伝わったのか、今日の朝は鶏たちの鳴き声で起きることはなかった。しかし残念ながら寝すぎてしまいランドリーを頼みに行ったら兄ちゃん遅すぎやから明日の朝の仕上がりになるでーと言われ無念。気を取り直して昨日の朝と同じ食堂でサンドイッチを頬張りラオコーヒーのカップを片手に宿に戻る。

さて、ランドリーに洗濯物を出したので今日のToDoリストは真っ白になってしまった。ま、とりあえずだらだらするべと宿の二階にある椅子に陣取って猫と戯れつつネットの海を漂っていると黒い蝶が近くの空を優雅に飛び去っていった。しばらくして部屋に戻りベッドの上でうだうだ。気づけば太陽もだいぶ高いところまで昇り、いかんいかんと散歩に出かける。

北の方は昨日行ったので今日は南に向かった。病院や小学校を横目に見かけたレンタルバイク屋で値段を聞きつつ歩いていたらもう町外れのほうまで来てしまった。腹が減ったので今度は食堂のメニューをチェックしながら来た道を戻っているといつの間にか中心部に。

バンビエン初日の夜に行った食堂で米でも食うかと注文。レモンジュースを飲みながら一服していると昨日ツーリストオフィスでちらっと見かけた日本人っぽい女の子が店の前に。話しかけてみると北陸出身の彼女もまた自分と同じように1年ほど世界中を回る予定の日本人旅行者だった。

出発時期や訪れる国にわりと共通点があったので話し込み、今からサンセットを見に行くと言う彼女に同行して再び南の町外れまでのんびり歩く。迷うことなく彼女が聞いたおすすめサンセットスポットまで辿り着き、周辺でビールが買えるところを探したがどこにも売っていなかったので諦めて川べりに座る。目の前の川を船が横切り空に気球が浮かんでいくのを眺めつつ太陽が沈むのを待った。

太陽が渓谷にすっかり隠れてしまうのを見届けた後中心部まで戻ってラオビールで乾杯し、来年帰国したらどうするかなど長期旅行者特有の悩みについて話していると二つ目の瓶が空いた。グラスの底に残ったビールを飲み干しバンコクかコルカタ、あるいは中南米での再会の可能性とお互いの旅の安全を願い彼女と別れる。

女の子の一人旅は野郎と違って様々な危険の可能性があり、彼女も十分認識していた。それでもなお旅立った彼女に幸多からんことをとすこしほろ酔いの頭で考える。ああ、こんな保護者じみたことを考えるなんて自分はもう決して若くはないのだ。

 

Money Mark – Black Butterfly


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