DAY 037 White Birds

ブハネシュワールには定刻で到着した。乗り換えに3時間ほど余裕があるので夕食を取れるところを探しに外へ出る。駅から出て周辺を歩いていると「ああ、ここはもうプリーではないのだ」と当たり前のことを改めて実感した。ストレンジャーな自分を見る視線が明らかに違っていて、気のせいかもしれないがその視線の温度がやけに低く感じた。

真新しい建物にFOOD COURTの文字を見つけたので入ってみると1Fには綺麗で広いスーパーマーケットが入っていた。値段もやや高く水とラッシーだけを購入しエスカレーターで上に向かうと電器屋があって大きなiPhone 6のポスターが入り口に貼られていて、さらに上の階のフードコートでメニューを見たらピザやファストフードが中心だったので外に出た。少し歩いた屋台でベジヌードルを食べたが不味くはないのに味が濃くて、朝に食べたホテルのチョウメンがもう懐かしくなった。自分はこの町を好きにならないだろうし、この町も自分を好きにならないだろうとなんとなく思う。

 

ハイデラバード行きの列車に乗り込んで自分の寝台を見つけた瞬間若い女の子から声を掛けられた。席を交換してくれないかという申し出だった。友人たちと席が離れてしまったらしい彼女の申し出を特に断る理由がなかったので了承した。新しい席は二段寝台の下だったがコルカタからプリーまでの列車の時と違いメインバッグを座席の下に収納できたので寝台を広く使って快適に眠れた。

夜明けと共に目が覚めた。乗降口の扉を開けてこっそり一服する。扉一枚ぶん開け放たれた風景は絶景ではなく、でもしみじみと優しく美しい風景。水鳥だろうか、白い鳥の群れが一斉に飛び立った。さて、寝台に戻ってチャイ売りが来るのを待つか。

寝台の上でぐだぐだとしていると新たに乗り込んできた乗客が自分の寝台にやって来た。どうやら席を交換した女の子はもう降りてしまったらしく、次の乗客にこの寝台は割り当てられているみたいだ。本来の自分の寝台に戻ろうと思ったら車掌らしきオッサンにばったり会って説明すると何故か再び座席が変更された。なんだそりゃ。

指示された寝台に上って向かいの若い男に挨拶し、しばらくしてから乗降口で一服して戻ると”It’s extra.”とチャバティとカレーが入った新聞紙の包みを渡された。どうやら自分が席を外している間に来た車内販売で購入してくれたらしい。ありがたく頂くことにして、その後に来たチャイ売りからチャイを二杯注文して”It’s extra”と言って渡すと彼はニヤリと笑った。

 

セカンダラバードを過ぎてから列車のスピードは急に遅くなり、ハイデラバード・デカン駅に到着したのは定刻より1時間遅れだった。駅を出て目星を付けていたホテルを目指して近寄ってくる客引きをかわしつつGoogleMapを頼りに歩く。何故だろう、昨日の夕方に立ち寄ったブハネシュワールのような嫌な感じがしなかった。ハイデラバードの最初の感触は意外と悪くない。

 

The Beatles – Blackbird


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