イントロのギターが鳴った時、斜め前に立っていた女の子ははっとした表情に変わりすぐに手で顔を覆った。わかりすぎるほどにわかってしまった、自分も同じ気持ちだったから。

何の気なしにジャニスで借りたミツメの「A Long Day」は妙に癖になるアルバムだった。ミツメを知るきっかけになった「あこがれ」以外もいい意味でいちいち引っ掛かることが多く、アルバムを通して聴くことが久しぶりに楽しくなりジャニスに行くたびにミツメの旧譜を借り続けた。

ある日、前日にiTunesにぶち込んだプレイリストを再生しているとミツメの1stが始まった。そして出会った、見つけてしまった、気づいてしまった。「怪物」、最初に聴いた時は名前ほどのインパクトは受けなかったのに無意識にエンドレスにリピートし続けた。結果的に、自分にとっては名前通りの怪物になった。

たぶん個人的ないろんなもののタイミングやシチュエーションが噛み合いすぎてしまったのだろう。初めて聴いたのが夏だったらここまでハマっていたかわからない。確かなのは、真冬の真夜中のバルコニーで震えながらイヤホンを耳に突っ込んで「怪物」を聴きながら何十本も煙草を灰にしたということだけ。

日が傾いて下北沢に向かう前にTwitterでミツメを検索したら「あの曲を久しぶりに演るかも」というツイートを発見して一気に心拍数が上がった。ソールドアウトした下北沢SHELTER、butchersのofficial bootleg以来だから10年ぶりくらいの古くて狭いライブハウスで通勤ラッシュばりにぎゅうぎゅうに詰め込まれながら客電が落ちるのを待つ。

そして、ミツメの4人が出てきた。ツアーではないので予想通り新譜以外の曲も多めな前半のセットリストにただ期待感だけが高まっていく。そしてその時は訪れ、少し目の前がぼやけ、幸せな4:17はあっという間に過ぎて、出来るだけ零さないように浴び尽くした。

4人がステージから去って客電が明るくなりすぐに階段を上がって外に出た。再入場禁止なのはわかっていたし対バンのどついたるねんに興味が無いわけではなかったけれど、これ以上は完全に蛇足だった。ひどく幸せな夜。

 

ミツメ – あこがれ