ジャニス・マラソン(レンタルCDを当日返却して安く上げるために合計40km自転車を漕ぐ)の日。店内に入ってすぐの邦楽の新譜コーナーを物色していたら思わずカゴに入れてしまった一枚があった。RADWIMPSの「君の名は。」サウンド・トラック。

数日前に1日で安いし、ちょうど気分転換したかったしということで観に行ったのだ。いくら安く観れるとはいえ平日の14時の回だしガラガラだと思っていたのに大きなスクリーンで3割は客が入っていたのでちょっと驚く。事前に予約した時は誰も予約してなかった両隣もすでに埋まっていた。

ぐるりと劇場内を見回すと時間帯が時間帯なのでほとんどが熟年夫婦やグループ、あるいは小さな子どもを連れたお母さんだった。やがて照明が落ちて予告編(控えめに言ってこれっぽっちも観に行きたいと思わない映画ばかりだった)のラッシュを挟んで本編が始まる。

エンドロール、深くて長い溜息が出た。この映画は間違いなく傑作だった。大ヒットするに見合う内容だった。涙はこぼれ落ちなかったもののクライマックスのあたりではうるうるしちゃったし。そして一人で観に来てしまったのが本当に悔やまれる、この映画を観ている間なら知り合って間もない距離感離れまくりの女の子の手だって簡単に握れちゃうんじゃなかろうか。

正直なところ、今年の映画といえば「シン・ゴジラ」一択だと思っていたけれど相手が悪かったとしか言えない。「シン・ゴジラ」がすげえ面白かったことに疑いはないが「君の名は。」の懐広すぎな王道感はちょっと別格だ。勿論この2つの映画を比べること自体が間違っているのは重々承知の上ですが。しかし映画にこんな素直かつこてんぱんにノックアウトされちゃったのってすごく久しぶりだ。

劇場を出て大阪時代の映画好きの先輩と「君の名は。」について何往復化かLINE。いろんな意味でいろんなことを「振り切った」という意見に全面的に同意、そして制作側がRADWIMPSの音楽に寄せていったらしいと聞いてああやっぱりなと。

大阪で会社勤めをしていた頃、BGM代わりのラジオでRADWIMPSの「マニフェスト」という曲がヘビー・ローテーションされた時期があった。率直に言って「生理的に受けつけないとはこういうことか!」と思うくらい歌詞が駄目で、それ以降RADWIMPSと自分の人生が交わることはもうないだろう確信したぐらいだ。だって何処の誰かも知らん女の子の誕生日を祝日にするとかたまったもんじゃないです。

しかし「君の名は。」を観終わった今となっては「ありがとうRADWIMPS!」と手のひら返しまくっているので人生とは本当にわからないものである。少なくともこの映画はRADWIMPSの音楽が無ければ成立しなかっただろうから。

 

前述の先輩とのLINEで「ジブリを覗いたオリジナル・アニメ映画はヒットしないのが鉄則だったのにこれは一体どういう事態なんだ?」ということについていくつかやり取りになり、個人的にもうアニメという完全に非現実の世界じゃないと人々は没頭という名の逃避をし切れなくなっているんじゃないかと考える。

良くも悪くも実写は現実世界あるいは古今東西の現実的世界が舞台なりモチーフになっていて、どんなにファンタジーな世界観を持った映画も実写という枠からは逃げられない。ハリー・ポッターを演じるのは結局同じ世界に生きる同じ人間なのだ。そこが(昔は誰も気づかなくて最近になって判明した)実写映画の限界であり弱点なのかもしれない。

そう考えるとアニメって娯楽として最後に残ったファンタジーでありおとぎ話ということになるのか?うん、なんかやっと21世紀らしくなってきたなあ。