三日連続で中目黒、板橋区民のくせにお洒落ぶっている気がしないでもない。いい加減電車に乗るのも飽きたので自転車で行ったらたっぷり一時間はかかってしまった。

始めて訪れるギャラリー、Poetic Scape。先週行ったTOTEM POLE PHOTO GALLERYに置いてあったフライヤーが展示と今日のクロストークを知るきっかけになった。

フライヤーに印刷された一枚のモノクロ写真、横断歩道をやや上から撮ったスナップ。しかしただのスナップではない違和感、信号待ちをしている連中が綺麗に横一列に並んでいる。彼らの佇まいと身に纏う服が合わり異様に鋭い雰囲気が発せられており、安易に手を伸ばして触れようとしたら指先が切れてしまいそうなくらい。

展示説明の文章を読んで思わず頷く。Hysteric Gramourの写真だったのだ。中学や高校の時はちょっと奇抜で格好良いんだけど高くて手が出ない服を作っている、写真に興味を持ち始めてからはファッションではなく森山大道などのパンチありすぎな写真集を出版していたHysteric Gramour。そりゃあ納得せざるを得ないわ。

デザイナーの北村信彦氏と写真家の達川清氏のクロストークの日はちょうど断念した朝霧JAMの日程と重なっていた。これも何かの思し召しかと参加申し込みのメールを送ったら予約出来てしまった。後で知ったが定員20名のリストの中で自分が最後の一席だったらしい。

クロストーク開始15分前に到着してギャラリーの前で汗が引くのを待ちながら一服していると近くで同じく煙を吐いている革ジャンの男性に目を引かれる。立ち姿だけで「あ、この人が北村さんだな」と確信してしまうくらい静かで強いオーラのようなものを感じたのだが当たっていた。

ギャラリーの小さなスペースに敷き詰められた丸椅子の中で一番奥の角を選び座る。特に惹かれた渋谷の2枚の写真のちょうど間だった。客の年齢層はだいぶ高め、昨日行ったモントルー・ジャズ・フェスティバルみたいだ。ハービー・山口氏も来ていたので思わず握手を求めそうになったがそこは自制する。

クロストークが始まった。冒頭でHystericの写真を最初海外で、しかもメキシコとグラテマラで撮影していたと聞き驚く。今回の展示の撮影エピソードはどれも面白かったしDaido Hysteric no.4(通称アオ・ダイドー)の出版依頼の話なんかも聞けてしまった。達川氏が参加していた当時の写真家たちの自主制作誌「GRAIN」のインパクトも凄まじく、ちらっと紹介された時は身を乗り出しちゃうほど。

一番印象に残ったのは今回の展示を開催するに当たって話を聞いた北村氏が一瞬「昔やったことだしちょっと恥ずかしいかな」と逡巡し、でもいざ展示を見たら「沁みた」と発言したことだった。それがなんとなく理解できて、同時にとても羨ましくなる。将来「沁みる」ような仕事をしければ、と。

みっちりたっぷりのクロストークが終わってからちょっとした歓談の時間。ワインやバゲットサンド、鶏ハムがサーブされて少額だが参加費を払ったわけだしと有難く頂く。

ワイン片手に外で一服していると長身でスタイル抜群な年配の男性が話しかけてきた。渋いよりも鋭いという言葉が当てはまりそうなその人から長い間日本を離れていた時期がありベトナム戦争後のニューヨークでも暮らしたことがあると聞き当時のヒリヒリさしかない様子を聞く。

会場に戻り一通り堪能してもういい時間。さっき話していた男性が北村氏を見つけて「Hysteric Gramourってどういう意味なのか聞いてくる」と言ったのでその模様を最後に近くで野次馬させてもらい退散する。

帰りの山手通り、上り坂が多くてしんどかったが休憩が一度も必要ないくらいじわじわと興奮していることに気づきちょっとにやけた。

 

Patti Smith – Piss Factory