DAY 128 I wanna be a jellyfish with metal skin.

フロアはそれなりに混んでいるものの超満員というほどではない。踊れるスペースはじゅうぶん確保できそうだ。最前列は柵が邪魔なので二列目あたりに陣取った。ステージの上では着々と準備が進んでいる。

スタッフ達が舞台袖に消えた後も一人で機材を調整していた男がフロアの後方に向かって親指を立てた。男は黒いパーカーのジッパーを下ろしてTシャツ姿になり待ちきれない誰かが甲高く叫ぶ。自分の身体もじっと待っていることなんか到底無理でずっとずっと揺れている。

頭が揺れると後ろにくくった髪がワンテンポ遅れて付いてきて最初は鬱陶しかったが裏打ちのリズムのようだと気付いてからは心地良くなる。時折目が合うと笑いかけてくる隣の女は加藤茶のヒゲダンスみたいに両手を動かして踊っていてくそだせえなと思ったが自分だって傍目からみたら似たようなものだろう。

あの曲のイントロだ。音源と全く違うミックスに一瞬戸惑うがすぐにどうでもよくなる。自分の全身が余すことなく喜んでいる。しかしもどかしい。浴びている音全てに反応するには関節の数が足りなすぎる。

反応だけでは駄目だ。深海の潜水艦の外殻がソナー音を反射するみたいに自分も反射したい。反応して同時に反射したい。金属の皮膚を持つクラゲになって踊りたいのだ。

ぐるりとフロアを見渡すと全員が踊っているわけではなかった。地蔵のように立ち尽くしている奴記念撮影ばかりしている奴濃厚なキスをずっと続けている奴。楽しみ方は人それぞれだからどうでもいい。ただ邪魔をしてほしくない。頼むから自分の半径50センチメートル以内に入ってこないでくれ。

ヒゲダンスの女は消えて別の女が隣で踊っていて長くサラサラの髪の揺れて流れるさまがとても綺麗だった。女にかぎらず野郎でもどんな最低な変態でも必死に汗を掻いて髪を振り乱して踊る姿はとても美しいと思う。踊り続けないと死んでしまう病気に今だけかかっているのだ我々は。

 

Gold Panda – Marriage


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