DAY 005 Trippin’ Night

国営バスはとても快適で、座席の幅も日本の高速バスよりも広くラオスとの国境までぐっすりと眠っていた。出国、入国審査はどちらもあっけなく終わり、ラオス国内に入ろうとした時に妙なゲートを見つけた。日本の鉄道改札とてもよく似ていて、SuicaなどICカードをタッチするべきところにPassportという表記があったのでハイテクなやっちゃなあと思いつつ自分のパスポートをかざしても反応しない。隣のゲートで試しても変化なし。立ち往生しているとゲートの先の軍服のおっちゃんが向こうから回れと指示してくれ、パスポートを見せて入国完了。

バスに戻った後タイに長く住んでいる年配の男性に聞いたところ出国の際にゲートを通過するためだけのカードを普通強制的に買わされるのだそうだ。長いことタイに住んでいるだけあって彼はとても博識で、ヴィエンチャンに到着するまで平均寿命の短さやお坊さんの特権的特典についてなどややシニカルにタイ人について話してくれた。お互いの宿までのトゥクトゥクをシェアして彼と別れた。小さな町だからそこらへんでまた会いそうだ。

事前に予約していたBackpacker’s Gardenは少し中心部から離れたところにあり、チェックインが可能になるまで表のカウチで煙草を吸いながら待つことにする。ちょうど朝食の時間らしくひっきりなしに世界中からの宿泊者たちが目の前を通っていった。隣でメルボルンから着た女性アメリアが煙草を吸い始め、今日の昼にバンビエン行きのバスに乗ると言ったので向こうでまたばったり再会するだろう。

アメリアが去った後、隣りに座ったタイ人っぽい若者が日本語で話しかけてきたのでちょっと変な声が出る。見た目が全然日本人っぽくない彼は中国やベトナムでも日本人と思われずに旅行してきて久しぶりに日本人と会ったと言った。地元もわりと近く意気投合して宿で自転車を借りて中心部に飯を食いに行くことになったのだが、一番安い自転車を借りたら途中でブレーキが効かなくなりサドルも常に前後に傾く素敵過ぎる仕様だった。パッタイを食いラオビールを飲んだら眠くなってきたのでアジアンジャパニーズな彼と別れて宿に戻り、フロントのポーランド人に自転車についてちょっとだけ小言を言ってひと眠り。

 

起きたらもう夕方で、晩飯を食いに行きがてらナイトマーケットをひやかして宿に戻って外のカウチで日本人の彼と煙草を吸っているとジャーマンウーマン、カリフォルニアガール、アイリッシュの青年が酒瓶片手にやって来た。

 

ジャーマンが持ってきた通称ラオウィスキーはとんでもなく安くとんでもない度数のスピリタスみたいな酒。フランス人オリバーも呼ばれてやって来た。カナダのミザエルも呼び止められてハンモックに揺られてる。バレンシアから来た陽気な男とフロントで働いてるポーリッシュも加わった。パーティーは知らぬ間に開かれていた。ミザエルは見た目通り内省的で物静かな男。自転車で旅しているから日本の道は最高らしい。こういう奴はとっきにくいけどいい奴だ。バレンシアの男は映画フリーク、宮崎アニメについて熱く語る。高畑勲の火垂るの墓で号泣したとか。グッド。ウィズダムコーナーで園子温の愛のむきだしの素晴らしさを熱弁され俺も映画館まで観に行ったと言ったら固い握手。オリバーは浦沢直樹を心の底から尊敬していて今連載中のビリーバットを褒めまくる。フランスで出版か放映されていないYAWARA以降で作風がガラッと変わったと説明すると神妙な顔で頷いた。ひとり輪から外れて離れたところにある椅子に座り煙草に火を点ける。シャッターを切った。映画のワンシーンみたいに世界は満ち溢れている。ちゃんとベッドまで辿り着けるかな。コンタクトレンズ外せるかな。貴重品はベッドの下に入れて鍵かけなきゃ。世界は回りそして沈んだ 。

 

Broken Social Scene – All To All


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