DAY 328 Buena Vista!

朝食を食べているとカサの男が「今日は予約が入っているから泊まれるのは3人だけだ」と言ってきた。カンクンで同じ宿だった日本人5人で偶然にも貸切状態だったが誰かが他のカサ移らなければならない。

自分以外の4人は他のカサに泊まっている数人の日本人とグループを作りつつあり結局自分一人だけが居残るころになった。こちらはそもそも面倒くさがりの上にこのカサが気に入ったので願ったり叶ったり。決してハブられたわけではないですよ。

昼飯を食いに外に出る。ずっと降り続いていた雨はもう上がっていたが太陽は相変わらずストライキの真っ最中、しかも代役の雲の機嫌は昨日と同じく悪そうだ。骨董屋や土産物屋、画廊を覗きつつ何人かの旅行者に薦められた日本食の食堂を目指す。骨董屋の軒先に吊るされたジョン・レノンとチェ・ゲバラの写真が気になったので値段を聞いたら10CUCと意外にお高い、でもいい写真なんだよなあちょっと考えよう。

交差点で信号待ちをしていると一人のおっさんが絵あるぞと声を掛けてきた。どうやが画廊で絵を物色していたのを見られていたらしい。見せてきたのは煙草の煙を吐くゲバラの横顔の絵で、値段はなんと3CUCで複製ではなくちゃんと手描きとのこと。さっきの画廊では小さいのが安くて20CUCからだったので見るだけにしたがこいつは安い、しかもゲバラ云々を差し引いて絵としても嫌いじゃない。

2.5CUCにしてよと言ったらあっさり下がったのでもっと値引き出来たかもしれないがそもそもが安いので全然気にならない。さてカツ丼が待ってるぞと食堂の近くまで来たところで一人のスタイル良すぎなナイスガイが声を掛けてきた。背高えよ、足長えよ、頭小せえよこの野郎。

彼は英語がわりと話せたので立ち話をしていると「この近くで今からブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブが演奏するぞ」と教えてくれた。他にもいろいろ教えてやるから来いよと言うのでついて行った先はとある、おそらく観光客向けのレストランで店内の一角には楽器が準備されていて小さな告知板に「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の文字。本物じゃん。

ドリンク料金だけで演奏が聞けるというのでバンドの目の前のテーブルに座った。そしてせっかくなのでブエナ・ビスタというカクテルを頼んで彼フランシスコと乾杯。普段はサルサの先生をしているという彼に「旅行者には教えてないの?」と聞いたら「地元の子どもにしか教えてない。友達は1時間10CUCで教えてるよ」とのこと。惜しいなあ、サルサ習いたかったのに。

フランシスコは鞄から葉巻を取り出して一本くれる。今吸ってみたいというと豪快に先端を噛み千切って火を点けてくれた。そしてちょっと待ってろと外に走って行き、戻ってきた彼の手にはゲバラの肖像が刻まれた旧硬貨が握られていた。

窓の外で雨が降り出すとほぼ同時に演奏が始まった。ずっと昔に映画のサントラを聴いた時にはいまひとつぴんとこなかったのに今はすっと耳に入り意識せずとも身体はリズムに乗っている。そうだ、このゆるくてけだるい空気の中で聴くからこそ響くのだ。

ウエイトレスのおばちゃんがおかわりはどうだと聞いてくる。カクテル一杯で8CUC、決して安くはない。でもフランシスコから葉巻や硬貨を貰ったしここの払いは自分が持つつもりだったので財布にいくらあるか思い出す。うん、二杯目までなら大丈夫。そして再びブエナ・ビスタを聴きながらブエナ・ビスタで乾杯。洒落てるぜ、この野郎。

 

Buena Vista Social Club – Amor de Loca Juventud


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