目が覚めて時計を見ると午前0時を少し過ぎていた。同室の連中は誰も帰ってきていないようでどのベッドも空だ。下に降りて外で煙草を巻いていると寒さでちょっと目が冴えてくる。今夜のイベント情報を改めてチェックしてみる。うん、とりあえず行ってみようかベルクハイン。
最寄りのSバーンの駅で降りていかにもベルクハインに行きそうな雰囲気を出してる奴らの後ろをついて行く。重低音が漏れ聞こえてきた。その音がだんだんと大きくなるにつれて長い行列が見える。最後尾に並ぶとエントランスは遠すぎて全く見えない。まあ来ちゃったからにはしゃーない、並ぶしかないな。
30分経った。自分の位置は10mほど前方に動いたかもしれないがエントランスはまだ遥か遠い。そしてじっと立ち続けているだけなので身体の芯の芯まで冷えている。しまった、マウンテンパーカーの下にインナーダウンを着込んで来るべきだったか。
腕時計のデジタル表示は午前3時。あれ、さっきスマートフォンのほうは午前4時だったのに。そうか、サマータイムが終わったのか。まさか夏の終わりを行列に並んで震えながら迎えることになるとは。やれやれ。
午前5時、エントランスが見えてきた。そして話に聞いていたベルクハインの洗礼も見えた。エントランスに入る前にスタッフに一瞥され客は入場できるかどうか決まる。さっきから見ていると弾かれる客も少なくない。基準は不明、モードなファションじゃなきゃ駄目とかチャラそうな雰囲気は駄目とか言われているらしいけど。
目の前のカップルが弾かれた。こんだけ並んだのに判断は一瞬だ。そして自分の番が来る。スタッフの男は自分を一瞬見つめた後に「一人か」と聞いてきた。一人のほうが入場しやすいと聞いていたしこれはいけそう。「一人」と答えると彼はゆっくりと首を振って「お帰りはあちらです」と手をエントランスの外に差し出した。なんでじゃ。
Thomas Fehlmann – Bienenkonigin
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