次の目的地、イシュコーシムへ。ホテルの近辺で車を探していたがなかなか見つからず、諦めてふもとの村まで降りて改めてヒッチハイクしようと考えていたらホテルのねーちゃんがイシュコーシムに向かう車があると教えてくれた。慌ててパッキングを済ませてミニバンに飛び乗る。
途中でタイヤがパンクしたがそれ以外は特に問題なく、車は順調に西へ向かっていた。ゆるやかな山道を上っている時に一台のトラックが停まっているのが見え、トラックの運転手らしき男が外でなにやら合図を送っている。停車してこちらのミニバンの運転手が外に出て二人はトラックの陰へ。そして乗客のおばちゃんたちも外に出ていった。
なんだか時間がかかりそうだなと思い自分も外に出たがさっきまであんなに賑やかだったおばちゃんたちが静かになっていて表情も暗い。その理由はすぐわかった、トラックの陰には一人の男が寝かせられておりトラックの運転手が心臓マッサージをしていたのが見えたからだ。
何があったのか?と身振り手振りで一人のおばちゃんに聞くと手を使って胸の上を横切るようなジェスチャーで返されたのでたぶんトラックに轢かれてしまったのだろう。少ししてトラックの運転手は蘇生を諦めて苛立ちながら携帯電話で誰かと話し始め、おばちゃんたちは泣き始めた。
ここにいても何も出来ることがない、出発しようという風にこちらの運転手が促した。ひとりのおばちゃんが肩にかけていた布を轢かれた男の身体を覆うように掛け、我々の車は再び西に向かって走り出す。車窓から見慣れてしまった絶景を見ながら、明日にはもう轢かれて死んだ男のことなんて忘れてしまっているのだろうなとぼんやり考えていた。
Alva Noto & Ryuichi Sakamoto – ax Mr. L
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