DAY 163 He is a speed maniac.

朝6時に目覚ましが鳴った。寝惚けながら食べる昨日のうちに買っておいたマンティとケーキは一晩経ったせいであまり美味くはなかった。7時半過ぎにはオシュバザール近くでビシュケク行きの車を見つけて交渉し乗り込む。しかし車が出発したのは結局二時間後だった。

ドライバーは若く、出発を待つ間外で煙草を吸っている自分を見つける度にカンフーのポーズを見せてくるようなやんちゃな(落ち着きが無いとも言う)男だった。そして見た目通りといっては失礼かもしれないが彼のアクセルペダルの踏み込みは常に深く乗客たちはこれから十時間ほどはらはらすることになる。

山道に入ると車体は大きく揺れ続け、隣に座っていたおばちゃんの膝の上に座っている小さな男の子はついさっき飲み終えたばかりのにんじんとりんごのジュースを勢いよく吐き出した。おばちゃんがちょっと叱ってビニール袋を取り出し男の子の口元にあてがい、男の子はしばらく吐き続け車内にはしばらく甘いにんじんの匂いが漂っていた。

昼食休憩を挟みつつ車は上ったり下ったりくねくねぐるぐると曲がったりをひたすら繰り返していく。ちらっと見えた速度計の針は時速100kmのあたりでゆらゆら揺れていて、飛ばすのはいいけど頼むから無事に着いてくれよと心のなかで何かに祈る。

正直頭のねじが何本か抜けているんじゃないかと思うくらい飛ばすくせにドライバーの男はとても退屈そうで、ことあるごとに助手席に座る若いキルギス人の女の子にちょっかいをかける。その度に女の子は軽くあしらわれるのだが全然めげる気配がなく、時々ルームミラーごしに自分と目が合うと「マイ・ギョル(ガール)」と女の子を指さしにやにやと笑う。わかったわかった、とりあえず前見て運転してくれ。

まだ日が落ちる前にオシュに到着した。車に乗っていただけなのいにやけに疲れたなと思いつつトランクからバックパックを出そうとするとドライバーの男が「もう500ソム」と言ってきた。いやいや、ガソリン入れる時にもう全額払ってますやん。取り合わずにじゃあねと歩き出すと男は追ってくる様子もなく、なんだよ言ってみただけってやつかよと溜息が出た。

 

Adebisi Shank – Colin Skehan


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