DAY 021 The Invitation to the Cat Hostel

外はまだ薄暗く、リビングに降りてポットの電源を入れてお湯が沸くまでの間外に出て煙草に火を点けた。空の赤は徐々に薄れていって薄い水色に変わっていく。自分の背後を次々と黄衣を纏った僧侶たちが通り過ぎて行く。

もうすっかり慣れた甘ったるいだけのインスタントコーヒーを作ってもう一度外へ。隣の食堂はシャッターを開けたものの準備が終わるまでもう少し時間がかかりそうだ。完全に明るくなった空に雲なんてどこにもなくて、また雨の降らないじりじりと暑いだけの一日が始まる。

 

どうやってWE BELIEVE HOSTELを探し当てたんだっけ。Googleでバンコク おすすめ カオサン以外とでも打ち込んだのだろうか。TripAdvisorのレビューがやけによかったのでとりあえず3泊予約したんだった。空港でタクシーの運転手に場所を説明するのが少し大変だった。

このホテルの立地は多くのバックパッカーたちにとってそこまで便利ではないだろう。いまだに彼らの聖地であり続けるカオサンロードに行くにはボートに乗って下船してからも少し歩かなければならない。もしあなたが若くて体力や好奇心が有り余っているバックパッカーならば素直にカオサンの近くの宿に泊まったほうがいい。しかし深夜まで続くカオサンの喧騒にうんざりしているのならばこのホテルに足を伸ばしてみてはいかがだろうか。

WiFiはちゃんと接続できるし、コーヒーや水、食パンは無料で提供されている。部屋の中や共有スペースは清掃が行き届いていて、ドミトリーは二段ベッドではなくシングルベッドが並んでおり全く圧迫感を感じさせないしそれぞれ個人用のコンセントも用意されている。一日だけ泊まったツインルームも快適と言う他ない部屋だった。

このホテルで自分が一番気に入っているところは昼間の光の入り方だ。採光性がとても良く、それでいて眩しさや暑さを感じない絶妙なバランスでどこに居てもとても気持ちがいいのだ。あまりに居心地がいいので外出するまで時間がかかってしまうのが難点といえば難点だろうか。

宿の隣には朝早くからやっている食堂があって、もしあなたが早朝の飛行機でバンコクに到着して朝9時のチェックインまで時間を持て余しているのであれば優しい味のヌードルを啜りながら待たせてもらうとよい。食堂のお母さんや息子も慣れたものでコンセントも使わてくれる。

5分歩けば着くボート乗り場の方へ足を進めると日中だけしかやっていない食堂があり、店先のショウケースに大皿に盛られた美味しそうなおかずがずらりと並んでいる。ご飯の上にのせるおかずを選ぶ際にしばしばスパイシーと注意されるが無視して頼むとたまに本当に辛いおかずがあるので水は持っていこう。夜になれば屋台がずらりと並ぶセブンイレブンの前を通り過ぎたらもうすぐボート乗り場で、片道15バーツでカオサンロードや有名な観光地の近くまで行けるのでなかなか便利である。バスの場合はホテルの前の大通りのバス停に停まる何本かのバスに乗り、ビクトリアモニュメントで降りたらサイアムやシーロムなど新市街へはBTSで一本だ。

ホテルの中にはたくさんの猫がいる。とはいっても本物の猫ではないので猫アレルギーの人もご安心を。リビングにはたくさんの猫のぬいぐるみが置いてあり、バスルームの洗面台は大きな猫の顔の形をしている。チェックインの時に渡されるカードキーにも小さな猫のぬいぐるみがぶら下がっていて、滞在中は常に猫と一緒だ。中でつながっている隣の猫雑貨屋も同じオーナーが経営しており、男子諸君は猫好きの女の子を連れて行くとけっこう喜ばれるんじゃないかな。

長い髪をくくったオーナーは見た目通り気のいい男で、物腰も柔らかく親切だ。彼のガールフレンドは英語が堪能でかなりの美人さんで、夜遅くまで雑貨屋のテーブルでラップトップを叩いている働き者。アルバイトで日中だけ店番や掃除をしている女子大生の2人も見ていて微笑ましくなるいい子たちだ。

 

さあ、そろそろシャワーを浴びて荷物をまとめなきゃ。昨日もらったフィッシャーマンズパンツを早速履いてみようかな。手持ちのバーツにそんなに余裕はないけれどチェックアウトする時に隣の雑貨屋で気になっていた辛子色のバッグを買っていこう。スーパーカーのスロウなナンバーがよく似合うこのホテルを将来再訪する時は果たして自分はどんな旅行をしているのろうか。とても楽しみだ。

 

SUPERCAR – Wonderful World (from RE:SUPERCAR 1)


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